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ゲームとか小説とかの感想をぶちまけます.多分ほとんどミステリです.

【感想:ネタバレ】恋する寄生虫/三秋縋

 

恋する寄生虫 (メディアワークス文庫)

恋する寄生虫 (メディアワークス文庫)

 

 ※ネタバレ注意

 

90/100点

 

先日発売されました,三秋縋の新刊です.
三秋縋はSSを書いていた時代から追いかけているので,久々の新刊に期待が高まっていました.

一言で言えば最高でした.
三秋縋に求めているのはまさにこういうものだなあって感じです.
世間から爪弾きにされた主人公が変わり者のヒロインと出会って恋をして「二人にとってのハッピーエンド」で終わる,そんな作品を永久に書き続けてほしいです.私のために.

この作品はハッピーエンドだ,というところに疑問を覚える方もいるかもしれません.
もちろん,和泉さんとか瓜実先生なんかはどう見ても幸せになってませんが,しかし佐薙と高坂の二人だけを見るならば,この物語は最善の終わり方をしています.
佐薙は,独白の通り,幸せの絶頂で死ぬという「完全な勝ち逃げ」に成功しました.愛を実感しながら好きな人の胸の中で穏やかに亡くなるのが幸せでなければ,この世に幸せなんてないです.
高坂にとっては,<虫>の支配力が弱まっていっても,佐薙が人生のすべてでした.それは,9章で和泉さんから<虫>の真実を語られた後,彼は佐薙のことしか考えていないという事実から明らかです.治療を止めるか止めないか,とかそんなことは一切考えていないのです.
そして,彼は最愛の彼女と愛し合ったまま,彼女の最期を看取ることができました.これは幸せですよね?

もう少し,高坂の話を続けます.
好きな人が亡くなったんだから不幸だろという意見はもっともだと思います.私も好きな人が亡くなったら悲しいです.
ですが,高坂の置かれていた状況を考えてみれば,彼は「彼にとっての最大の幸福」を掴んでいるのです.
高坂は<虫>の影響で潔癖症であり,佐薙と出会って治療をしなければまともに社会生活を送れない状況でした.
しかし,治療を続けていけば彼は死にます.
すなわち,どうあがいても彼には(万人にとっての)幸せな人生は待っていなかったわけで.
そんな中で,佐薙と出会ったことが幸せじゃなければ何なんですかと言いたい.
幸せっていうのは相対的なものなので,自分に当てはめて考えても意味はないと思います.

三秋縋の作品は,こういう絶望的なハッピーエンドが多いですよね.
大好きです.
絶望的な状況を一見抜け出したようで,よく考えると目の前には絶望しかない感じ.

 

今作で一番好きなセリフ.

P.239『紛いものの恋で何が悪いの?(中略)私は操り糸の存在を知った上で、それにあえて身を任せているんだよ。これが自分の意志でなくてなんだっていうの?』

紛いものの恋でいいので恋したい.

 

あと,目黒寄生虫館は最高です.
以前訪れたことがありますが,この本を読んでから行くと見所がわかりやすいかもしれないなあと.
狭い建物なので15分もあれば一通り巡れます.ぜひ.デートスポットなのは事実です.